ブリリアレジデンス六甲アイランド/GOOD DESIGN賞

ブリリアレジデンス六甲アイランド/GOOD DESIGN賞

住民参加型「ワークショップ」から生まれた緑地広場

神戸市の人工島・六甲アイランドに建つ集合住宅における、ランドスケープデザイン。六甲アイランドは当初より計画的な街づくりに基づき、緑地帯内に住宅ゾーンを配置し、既存市街地とは異なる緑豊かで開放感のある住宅地を形成している。昨今、開発スピードの鈍化・人口の伸び悩みが顕在化し、島内では街の先行きに対する不安も漂い始めている。一方で、住民は新たな開発に抵抗感もある。このような状況下、地域環境や住民と調和を保ち開発を進める事が最大の課題であった。

そこで、街並みと地域コミュニティとの調和を図るべく、計画段階から開発者と周辺住民が共に開発を検討できる「ワークショップ」を開催し、約5,500㎡の広大な“緑地広場”を整備することで、入居者だけでなく、周辺住民らにとっても魅力ある場所づくりを試みた。

設計手法として、ユーザー(周辺住民)から多くの意見を引き出し整理する「コミュニティデザイナー」と、それらの意見を空間に定着させカタチに落とし込む「ランドスケープデザイナー」が役割を分担した。成果として、周辺住民の能動的な参画を促し、地域の多くの意見を反映する事を成し遂げた。

形をつくるデザイン面では、多様な活動を受け止めるスケルトンの環境を設定し、集約したワークショップの意見を、ハードな場所での動的な活動から、緑濃い場所での静的な活動までグラデーションでソーニングしている。子供から高齢者まで多世代の人々が共に楽しむことができる公共性の高い場所とし、人々が集うことができる「交流広場」、住民同士で運営する「市民菜園・花壇」、ボール遊びや体操など健康づくりに最適な「芝生広場」、散策や生物観察が楽しめる「ビオトープ」、四季の移ろいを感じる「林の空間」等を設けている。

ゲーテッドコミュニティになりがちな住宅地開発に対し、神戸市やマンション管理者との交渉を重ね、それぞれの場所で完結するのではなく、緑地広場と集合住宅のアプローチ動線、消防活動空地や提供公園、隣接する緑地帯、並木街路を一体的に連続させ、街の資産となる大きな広がりを獲得すると共に、通り抜け可能な新たな回遊ルートの創出を実現した。

また、「ワークショップ」での意見を踏まえ、完成後の持続的活用をサポートするソフト面の整備も行い、入居者と周辺住民の「交流イベント」を予定する等、緑地広場の継続利用を目的として「コミュニティクラブ」も組織している。
共有空間は、整備後、使用者が継続的に運営や管理に関わっていくことが重要である。ハード・ソフト両面から実践した持続可能な仕組みのデザインが、住民交流の一助となり、将来的に街全体の活性化につながることを期待している。

基本情報

名称:ブリリアレジデンス六甲アイランド
所在地:兵庫県神戸市東灘区向洋町中
敷地面積:20,000㎡
総戸数:455戸
竣工:2012.8
デザイナー:忽那裕樹、角田直之(元所員)

2012年度GOOD DESIGN賞