京染会館「京染の庭」/日本造園学会奨励賞 他

京染会館「京染の庭」/日本造園学会奨励賞 他


自然の反物による京の庭

京都において伝統的な工芸美術の妙技を伝承・発展させてきた「京染会」。その拠点施設である京染会館の屋上庭園デザイン。デザインのモチーフとしたのは、地元京都に由来する風景であった。色鮮やかに染められた優美な反物が静かに水面にたなびく様をモチーフとし、モダンデザインのシンプルな構成の中にも四季折々に趣きのある表情を見せる「京染の庭」の創出を試みた。

本庭園には、施主である理事長及び旧京染会館から受け継いだ伝統的な地元の庭園素材が数多く使用されている。京町屋である理事長邸庭園より路地経由で運び出された13種、34個の石材には加茂の七石である「鞍馬石」「真黒石」「貴船石」「糸掛石」等が含まれていた。これらの貴重な素材を伝統的な京都の庭園技法のもと、景石・飛石・敷石などとして無垢のまま利用・再構築することで、新たな庭園の要所を構成する印象深い風景を創出している。旧京染会館の外周部にて使用されていた石材(花崗岩)も理事長邸寄贈の真黒石と組み合わせた石畳やボーダー状の敷石として活用し、軒下の縁側空間や通路など、人々が庭園と触れ合う場所を構成している。

また、この庭は建築塔屋と連続する軒下の縁側空間から、庭にたなびく自然の反物を眺めることができる「鑑賞する庭」として成立しているとともに、バリアフリーも配慮し、芝生空間を利用した茶会など、建築最上階の展示スペースでの催事と連動できる「使う庭」としても成立している。建築プログラムと連動するしつらえを庭の構成に組み込むことで、平面的連続性を担保する伝統的な庭園構成に対して、居室と立体的に連続する屋上空間を都市部における「現代の庭園」として成立させることを試みた。

素材に蓄積された時間と風情を新しいデザインと伝統的な技によって受け継ぎ、この場を訪れる人々とともに新しい風景となって京染会の歴史を次代へ繋ぐ。「京染の庭」がそのような場所となることを願っている。

基本情報

名称:京染会館「京染の庭」
所在地:京都府京都市中京区
敷地面積:671㎡(屋上庭園300㎡)
竣工:2010.9
デザイナー:長濱伸貴、平山友子(元所員)、有原順子

2014年度日本造園学会奨励賞(設計作品部門)
2010年度KYOTO DESIGN AWARD 2010 京都デザイン賞