吉林松花河川公園

吉林松花河川公園

自然の移ろいを描く、大地のキャンバス

 

中国東北部を流れる松花江は、長白山のカルデラ湖から発し、吉林省の原生林地帯や都心部を流れるアムール川最大の支流である。冬には川沿いの木々に氷が付着する「霧氷」が見られ、まるで氷の花が咲いているかのような美しい景色が広がる。

 

松花江沿いの住宅開発に伴い、約18haもの河川敷空間を公園として整備することとなった。本プロジェクトでは、季節や上流のダムの放水量によって大きく変化する水位に順応できるランドスケープを展開すること、また、ローコスト、ローメンテナンスな計画とすることが求められた。ここでは、「自然の移ろいを描き出すキャンバス」のようなランドスケープをコンセプトに、周囲に広がる自然のスケールに合わせた雄大な大地の風景を創出し、人々の活動を受け止める小さな名所をちりばめることで、スケールの異なる風景を共存させている。

敷地内には、まとまりのある緑を構成するナラの自然林や河畔林のような一次的な自然に加え、かつて防風林として植栽されたのであろうポプラの列植や、釣り堀として掘削された池などの二次的な自然の多様な環境が存在している。ナラの自然林では微地形をそのまま生かしつつ、石畳の歩行空間を確保するとともに、現地の石材を使用したベンチを設置した。池の護岸はエロージョンを防止するために川原石を敷き詰め、緩やかな芝生のスロープによって親水性の高い空間をつくり出している。雨水排水計画においては、芝生に覆われた大地に起伏を設けることで水の流れるルートを確保し、美しいアースワークが排水機能を発揮する複合的な機能を持つデザインとした。暗渠を極力設けないことで、コストダウンにもなっている。

以上のような多様な風景をつなぐため、大きく3種類の園路を整備している。一つは堤体の足元を走る園路である。この園路は堤体が建設されたときに整備された園路であり、高水位の時でも沈むことはない。一方で、護岸のすぐ横、水面にもっとも近い場所にも園路を整備。松花江とその奥に広がる雄大な自然の風景を身近に感じることができるこの園路は、大きく湾曲した帯状をしており、歩くごとに水面との距離感が変化する。水際に近い区間は水位の変化により水没することもある。もう一つは前述の2つの園路を結び、敷地全体にネットを掛けたように敷設された園路である。堤内地から水際へと人々を誘い、樹林や河畔林、草地、丘、池など多様な敷地内の環境を結ぶ機能を果たしている。これらの3つの園路は敷地内の多様な環境を結びつつ、それぞれが機能を補完し合い、ネットワークをつくり出すように計画した。

美しい木立の林、広がる空とたゆたう川の流れ、行き交う人々……天気や季節によって異なる表情を描く風景が、キャンバスに描かれた絵画のように人々の心に残り、気持ちを豊かにすることを願っている。

基本情報

名称:吉林滨江河滩公园
所在地:中華人民共和国吉林省吉林市高新区
敷地面積:180,000㎡
竣工:2013.6
用途:河川敷公園
デザイナー:忽那裕樹、石原康宏、中谷丞、兪慧滢